中国兵士集団失踪事件  (1939)




 1939年12月10日のことである。中国軍は日本軍に攻勢をかけるべく、南京付近に集結していた。

 相手は南京を制圧済みで圧倒的優位にあった日本軍である。そこで、攻勢を有利にすべく援軍が要請され、約3,000人の兵員が現地に到着、夜のうちに2マイルにわたって前線に展開した。司令官は援軍の配備状況を確認し、1マイル後方の司令部に戻った。

 ところが数時間後、司令部のもとに、部隊が無線に応答しないとの一報が入る。司令官が前線に赴いたが、そこは既にもぬけの殻と化していた。大砲は所定の位置に配備されたまま、野営の火は燃えたままであったにも関わらず、肝心の兵士達が一夜のうちに一人残らず姿を消していたのである。

 突発的な戦闘が起きた形跡はなかった。それならば1マイル後方の司令部も気付いた筈であるし、日本軍側にもそれらしい捕虜の記録は残っていない。前哨点に駐屯していた兵士達を取り調べても、何の物音も聞いていないと言うばかりであった。兵士達の行方は、今もって明らかではない。

 



【考察】

 複数の文献に登場する比較的メジャーな失踪事件である。だが確認できた文献はいずれも信憑性の点で疑問符のつくものばかりであり、そもそも事件そのものが実話か否かは慎重に検討する必要があろう。また仮に事実だとして、戦争中という状況下、兵士が姿を消しても不思議なことではあるまい。この場合疑わねばならないのは、宇宙人でも四次元人でもなく、兵士が自発的に逃走した可能性である。

 検証するに当たって都合の良いことに、この事件は場所及び日付、そして「リー・フー・シェン」なる人物の関与が示されている。日中戦争史を丹念に調べ、本当にこの日この場所で該当する作戦が展開されていたか否か、リー・フー・シェンなる軍人が実在するか否かを調べれば、この事件のベールを引き剥がすことができよう。

 しかし、これは言うほど容易ではない。歴史事実の認定に共産党のお墨付きが必要なのが中国という国である。南京事件はおろか、日中戦争全体の死者数ですら、中国の主張する数字に数々の異説・反論が呈されているのはご存知の通り。まして戦争の一コマに過ぎない一事件、それも「兵士4,000人が戦線から失踪」などという不名誉な事実が、中国側の記録に残され公表されているかは疑わしい。リー・フー・シェンの漢字表記が不明である点も痛い(注1)。判明していれば調査はかなり楽になったであろうに。

 現在、折を見て調査中であり、何か進展があれば追って公表したい。





(注1)
 リーは恐らく「李」であろう。もっとも、外国人が音だけでっちあげた出鱈目の人名であれば、何の意味もない考察ではある。

【参考文献等】

『ストレンジ・ワールド』(原題:Stranger than Science) フランク・エドワーズ著 中場一典、今村光一訳 (曙出版)
『謎の大消滅』 ブラッド・スタイガー著 青木榮一訳
『謎の四次元ミステリー』 佐藤有文著 (青春出版社)




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